紙のない手紙
「これに…って、何の仕掛けもなさそうな単なる紙じゃないか…」







「そう見えるだけよ。届ける側としては、あんまり変なものだと困るのよ。」






「届ける側…?」




「そ。あたしらてがみ屋は死者同士の手紙も配達するけど、基本はこの遺書を届けるのが仕事なのよ。」








「届けるってどうやって…?」








「……う~ん…口で言うより見せた方が早そうね。」









そう言うとリンはガサゴソと鞄の中を漁り始め、そして、1通の手紙を取り出した。










「これ、届けに行くから。あんた、ついてきなさい。」









リンはそう言って近くに止めてあった自転車に手を置き、荷台の部分を軽く叩いた。











目眩が少しした気がした。
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