琥珀色の誘惑 ―王国編―
アラビア語でブツブツと唱えるミシュアル王子の顔を、舞は覗き込む。酷く怒らせたのではないか、と不安だった。


「いきなり、あんなのは……どうすればいいかわからないし……あの」


ミシュアル王子は大きく息を吐くと、舞から視線を逸らせながら答えた。


「いや、お前が正しい。私は結婚式を前に間違いを犯すところであった」


床に座り込んだまま、それでも胸を張って「自分が間違っていた」と言う辺りが王子らしいと思う。

舞は苦笑しつつ、


「さあ、王太子殿下、椅子にお座り下さいませ」


少し気取ってミシュアル王子に手を差し伸べる。彼がその手を掴もうとした直後、王子の頬が引き攣った。


「舞! 何だ、これは!?」


ガシッと手首を掴まれ、そこに薄い紫色の痣を見つける。昨日、ヤイーシュに掴まれた痕だ。


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