琥珀色の誘惑 ―王国編―
完熟トマトから湯気が立って見える。

ミシュアル王子とは違い、威圧感が全くないのはなぜだろう。


「そうだよね。だって王族男子って成人した時にそういう手ほどきを受けるんでしょう? アルが言ってたもの」

「あ、あれは……儀式というか……病院で受ける検査のようなものだ! 相手は倍も歳の離れた寡婦だし、目隠しをしたままで……あんなものは」



舞としては、“ベッドの上で妖艶なお姉さんに手取り足取り教えて貰う若きミシュアル王子”の姿を想像していた。

でも、ラシード王子の台詞を繋ぎ合わせると、それほど甘いムードではなさそうだ。


まず、医師の診察を受け、外見は男性に間違いなく、機能も問題ない、という証明書を貰わないといけないらしい。

その昔、王妃のひとりが女子を男子と偽り、王太子にまでしたケースがあったという。それから、王子にはとくに厳しくチェックが入るようになったそう。

その後は、淫靡な儀式と言うより、学校の講義のようだった、とラシード王子は話す。

相手に選ばれるのは四十歳を過ぎた寡婦と決まっていて、とてもお姉さんとは呼びにくい。

それでも情が移らないようにと、王子は目隠しまでされてしまう。相手は一切わからない上に、部屋の隅に立会人までいるという。


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