琥珀色の誘惑 ―王国編―
それでも、隣国に比べたらクアルンの儀式はソフトな方らしい。

世界は広い、と舞は改めて思った。



「とにかく、あの儀式を喜んで行う男はいない。僕は二度と嫌だ」


拗ねる姿がなんと言うか……可愛らしい。

ミシュアル王子が舞と同じくらいの年齢であったら、こんな感じだろうか。


「そう言えば……慣れてないって言ってたよね? 今度はちゃんと両手でつけたほうがいいんじゃない? 慌てたらロクなことにならないって言うし」


舞がさりげなく視線を送った先には、開封済み未使用の避妊具が落ちていた。


「アルなら素早くつけるのだろうが……僕は」

「だから知らないってば!」

「嘘を吐くな! 未経験の娘なら、こういった物は見たこともないはずだ!」

「クアルンがどうか知らないけど……。日本では中学の教科書にも載ってるし、高校では実物を見せて貰えるんだからね!」


どうやら、その台詞はラシード王子にはショックだったみたいだ。「だから日本人女性は……」とブツブツ言っている。


「だがお前は、自分に触れてよいのはアルだけだ、と言った。ならば、僕が割り込むべきではない。ライラはきっと何か思い違いをしているのだろう」


< 106 / 507 >

この作品をシェア

pagetop