琥珀色の誘惑 ―王国編―
「その時は、僕はお前を妻にしなければならない。それが、この国の法だ」

「冗談じゃ……」


ない、と叫ぼうとした瞬間、離宮中央の間――舞たちのいる部屋の扉が激しく叩かれた。


舞とラシード王子はビクッとする。



「アーイシャ様! お休みのところ失礼致します。火急の用件でお伝えせねばなりません。早急にこの扉をお開け下さい!」


この声は警護の女官ではなく、ヌール妃から使わされたお付きの女官だ。

シャムスの声がしない所から、眠らされたのは彼女ひとりなのかも知れない。

ヌール妃の女官にまでライラの息が掛かっているとは……。舞はこれまでの人生で経験したことのない、空恐ろしいものを感じた。 


「どうしよう。ねえ、どうするの? 何か考えはあるのよね?」

「い、いや……ライラはどうしてこんなことを? ここで見つかっては……僕は。父上や母上に……アルにだけ話すつもりが」


ラシードは大きい体を無駄に動かし、オタオタするばかりだ。


――ダンダンダンッ!


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