琥珀色の誘惑 ―王国編―
「アーイシャ様! アーイシャ様! お返事下さい!」


一瞬、扉が破られたのかと思った。しかし、この分ならそれも遠くはない。



「いっそ出て行ってハッキリ対決したほうがいいわ!」

「対決? 父上……いや、陛下と対決など恐れ多い」

「違うでしょ? ライラに決まってるじゃない。何であなたを罠に嵌めたのか、知りたくないの? わたしが邪魔なのはわかるけど……」


自分に気がある男の恋心を利用するなんて、あんまりだろう。

舞はそう思ったが……すぐに撤回することになった。

なぜなら、「ライラのせいではない」とラシード王子は言い切るのだ。

この期に及んでまだ、ライラに騙されたことを認めようとはしない。この筋金入りの頑固さは、兄弟よく似ていると言うべきか。



――ダンダンダンッ! ダンダンダンッ!


「アーイシャ様! お返事がないのは一大事でございます。直ちにこの扉を開けさせて頂きますが、よろしゅうございますか?」


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