琥珀色の誘惑 ―王国編―
ひとまず、ラシード王子をベッドの下にでも隠して……と思ったが、ベッドの下に人が隠れられそうなスペースなどなかった。

部屋中見回しても、かくれんぼは一切出来そうにない。


「ねぇ、裏の窓から入ってきたんでしょう? だったらそこから出て行ってよ。あの広い庭に紛れ込んだらひとりやふたり……」

「馬鹿者! 僕は、ヌール妃の後宮に繋がる抜け道しか知らないんだぞ。後は、主屋からここまでの通路を教わっただけなんだ。庭にはセンサーが配備してあり、侵入者は一発でわかる。裏の窓から出ても、結局は離宮内をうろつく羽目になる」

「じゃあ、馬鹿はどっちよ!」

「それは……」


このまま見つかったら、ライラの好き勝手に言われるだろう。

しかもこのラシード王子はライラが好きなのだ。彼女を罪人にするくらいなら、舞に罪を着せるだろう。

そう思うと、舞は絶望的な心境になった。悔しいが涙まで浮かんで来る。


「わたしはアルのことが好きなだけよ。王太子のお妃になりたいんじゃない。アルのお嫁さんになりたいだけなのに……。そのために、クアルンまで来たのに……」



――ダンダンダンッ! ダンダンダンッ! ダンダンダンッ!


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