琥珀色の誘惑 ―王国編―

(19)ワイルドな王子様

『シド! 聞いて頂戴。アルは婚約破棄を中止したそうなの。日本人女を連れて、クアルンに戻って来ると公式発表したわ』

『仕方ないさ、ライラ。アルが彼女に厭きて、他の妻を娶る気になるまで待つしかないよ』

『まあ、シド。あなたはそれでいいの? あなたのお母様がクアルンの王妃として相応しい女性なのは皆が知ってるわ。でもそれは、クアルンの血が半分混じっているからよ。生粋の日本人女が王妃になって構わないの?』

『それは……でも』

『子供の頃に約束したはずよ。いつでも、どんな時でも、わたくしの味方になってくれる、と』

『でも、アルの気持ちは生半可なことじゃ変えられない。君も知ってるはずだ』

『とんでもないことが起こったらどうかしら? 例えば、弟と通じた女を妻にしようとするかしら?』

『ライラ……僕がアルに殺される』

『あら? 十四歳の時、あなたがわたくしにしたことを知っても、アルはあなたを殺すんじゃなくって?』

『あれはっ! あれは君が……マフムードとはどうしても結婚したくないから、と。それに』

『ねぇ……お願い、シド。わたくしには、あなたしかいないの。……お願い』



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