琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ちょっとくらい待ってくれてもいいでしょ! こんな夜中に、パッと出られる訳ないってば」


舞はクアルン風の寝間着のままで、扉を開いて立った。


「それで、火急の用件って何ですか?」 


あまりに堂々とした舞の態度に、女官らは一歩後ろに下がる。

すると、横から前に出て来たのは……ライラだ。


「こちらの離宮に入り込もうとする、不審な人影を見かけましたの。慌てて警護の女官にお知らせして……あら? 髪が乱れておいでですけど」


ライラは口角を吊り上げ、獲物を生け捕ったような表情で続ける。


「……いやですわ。まるで情事の後のようじゃありませんこと?」


だが、舞も負けるわけにはいかない。


「情事? 経験がないのでわたしにはわかりません。ライラ殿はよくご存知なんですね」

「なっ!」


舞の反撃にライラの余裕の仮面が外れ、醜悪な本性が垣間見えた。


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