琥珀色の誘惑 ―王国編―
だが、そんな中で一つだけハッキリしたことがある。ライラがミシュアル王子を欲しがっていることだけは紛れもない事実だった。

正妃の椅子が欲しいだけなら、前王太子を受け入れてもよかったはずだ。


あのライラの行動を“愛”とは呼びたくない。

相手の気持ちを無視して、周囲の愛情まで利用して、他の全ての人間を傷つけても手に入れたいものが“愛”だなんて!


「そんなの、酷い。ラシードが死んだら、その責任を取ってアルに結婚して貰おうなんて。どうして、そんなライラを今でも愛せるの?」

「そうではないよ、アーイシャ殿」
 

ラシード王子は静かに口を開いた。

クアルンの男にとって、家族と名誉は命を懸けて守るのが当然のこと。女性の愛や尊敬は勝ち取るものだ。出来ないというなら、諦める以外にない。ラシード王子がライラを諦められない以上、彼女を守り闘い続けるのみ。


「舞――ライラを責めるのは間違いだ」


なんとミシュアル王子までライラの肩を持ち始める。


「どうしてよ! アルも見たでしょう? さっきのライラは悪意の塊だったわ。ライラはわたしを傷つけようとしてるのよ。アルはわたしを守ってよ!」


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