琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子は怒るが……。

ヌール妃の言葉が舞の胸を突き刺していた。


――後継者が生まれなければ、他に夫人を持たねばならない。悔しいけれど、それが現実。


ヌール妃に王族の女性たちがかしずくのも、王子を三人も産んだからだ。もし、舞が王子を産めなければ……。

考えたくないけど、いつかミシュアル王子は他のお妃を貰って、舞は形だけの王妃になる。国王陛下の第二夫人は国に帰ったと聞いた。その時は舞も、日本に戻ることになるのだろうか。


「子作りはまだ試してもおらぬのに、今から嘆く奴があるか。だが、それほど私の息子が産みたいのなら、結婚後は早々に励もう。式の後、砂漠で一週間を過ごし、ダリャに戻る。首都で即位と一連の儀式を行い、日本では一ヵ月ほど過ごせるだろう。そして国に戻り、避暑地ルシーアにある宮殿で約一ヵ月半ふたりきりだ。新婚の三ヶ月、昼も夜も私はお前を離さない」

 
久しぶりに琥珀色の瞳に見つめられ、舞は吸い込まれそうになった。


この琥珀(アンバー)という言葉の語源はアラビア語。それを知った時、真っ先にミシュアル王子の瞳を思い出した。

Tシャツ越しにミシュアル王子の鼓動が伝わる。

舞がジッと見ていると、瞬く間に彼の胸は激しく上下し始めた。


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