琥珀色の誘惑 ―王国編―

(21)嵐のようなキスを

クアルン王宮の後宮になんと、畳が八枚……八畳間がそこにあった。

なぜか、正面の壁一面が床の間のデザインになっており、中央にイスラム調の絵が掛けてある。

天井が異様に高い点も和室とは微妙に違う。どこか違和感は漂うが、それでもやはり、和室としか言い様のない部屋だ。

部屋の中央にお祈り用の絨毯が敷かれてある。

この和室は、ヌール妃専用の“祈りの間”だった。
  
 

後宮内は外敵の侵入には神経を張り巡らせているという。

だが、基本的に人海戦術なのだそう。長老たちの了解が得られず、ハイテク機器の導入が市内の建物の中で最も遅れているとミシュアル王子は嘆く。ラシード王子が言っていたセンサーも、市内では深夜の学校に設置されている程度のものらしい。

それに比べて王太子の宮殿は、全ての出入り口や廊下のポイント毎にセンサーが付いていた。

だからこそ、ライラが部屋を抜け出しただけで、ミシュアル王子はすぐに舞の部屋に飛び込んで来られたのだ。 


王宮や後宮の宮殿が重要文化財に指定されているのは確かだ。

だが、ミシュアル王子が即位した暁には、全て王太子の宮殿並に変更すると宣言している。


「ラシードのような不埒者は、金輪際現れない」


と、力強く宣言するミシュアル王子も、舞のために禁を犯した不埒者になる訳だが……。
 

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