琥珀色の誘惑 ―王国編―
さすがミシュアル王子の母上と言うべきか……。
男子禁制の後宮で息子のラブシーンに遭遇したのだ。しかもその場所は、ヌール妃以外は入ることが許されていない“祈りの間”。多少の動揺くらい見せそうだが、実に余裕綽々である。
女官たちは物音を聞きつけても飛び込むことが出来ず、ヌール妃を起こしに行ったらしい。
「見えてたよね? さっきの」
「抱き合っていたのは一目瞭然であろうな」
「見逃してくれたってこと?」
「それは……何とも言えぬが。舞、離宮までの道は覚えているな? 護衛の女官に見つからぬよう。万に一つも見つかった時は、迷っただけだと押し切れ。下手に出ては侮られるぞ。愛想笑いは禁物だ」
ついさっきまでの甘いムードは消え去り、ミシュアル王子は今にも抜け道に消えてしまいそうだ。
「ねぇ、ここはどうやって閉めるの?」
「心配無用だ。私が内側から閉じる」
「もう、行っちゃうんだ」
「……舞。何を考えている」
明日、いや、もう今日である。昼にはミシュアル王子が迎えに来て、彼の宮殿に戻る予定だ。二日ほど喧嘩していたから、ミシュアル王子は舞の部屋には来なかったが……。
抱き合って眠った夜のアレコレを思い出し、舞は真っ赤になってしまう。
男子禁制の後宮で息子のラブシーンに遭遇したのだ。しかもその場所は、ヌール妃以外は入ることが許されていない“祈りの間”。多少の動揺くらい見せそうだが、実に余裕綽々である。
女官たちは物音を聞きつけても飛び込むことが出来ず、ヌール妃を起こしに行ったらしい。
「見えてたよね? さっきの」
「抱き合っていたのは一目瞭然であろうな」
「見逃してくれたってこと?」
「それは……何とも言えぬが。舞、離宮までの道は覚えているな? 護衛の女官に見つからぬよう。万に一つも見つかった時は、迷っただけだと押し切れ。下手に出ては侮られるぞ。愛想笑いは禁物だ」
ついさっきまでの甘いムードは消え去り、ミシュアル王子は今にも抜け道に消えてしまいそうだ。
「ねぇ、ここはどうやって閉めるの?」
「心配無用だ。私が内側から閉じる」
「もう、行っちゃうんだ」
「……舞。何を考えている」
明日、いや、もう今日である。昼にはミシュアル王子が迎えに来て、彼の宮殿に戻る予定だ。二日ほど喧嘩していたから、ミシュアル王子は舞の部屋には来なかったが……。
抱き合って眠った夜のアレコレを思い出し、舞は真っ赤になってしまう。