琥珀色の誘惑 ―王国編―
「いや、答えずともよい。……まったく」


薄暗闇の中、ミシュアル王子の体温も上昇しているみたいだ。

舞は、彼を少し困らせ、更に少し甘えてみたくなった。


「ね、最後にもう一度だけ……キスして」


我ながら、男性にこんな台詞を言う日が来るとは……。夢にも思ったことがなく、舞はドキドキだ。

だが、言われたミシュアル王子は舞以上に驚いている。

目を見開き、頬を硬直させるので……まさかとは思うが、こんなところで怒鳴ったりしないでしょうね、と舞は不安に駆られた。


だが、その直後――。

黒い影が、再び舞の上に覆いかぶさった。ほんの数秒、火傷するような唇を押し付けられる。舞の唇はミシュアル王子の熱で溶けてしまいそうだ。


「――舞! 明日の夜はただでは済まさぬぞ。覚えていろ!」


悪態と言うより、情熱の口説き文句を残し、ミシュアル王子は去って行くのだった。


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