琥珀色の誘惑 ―王国編―
あのライラの叔母、ハディージャ妃のテリトリーに入らないように注意しつつ庭を歩く。


舞には気になることが他にもあった。
ヤイーシュが舞とアルの結婚式直前、休暇を取り部族の元に帰ったというのだ。


「ちょっとアル! わたしがお礼を言いたいって言ったから、追い払ったんじゃないでしょうね?」

「お前はそんなにヤイーシュのことが気に掛かるのかっ!?」

「そうじゃなくて。わたしのせいでアルが大事な側近を失ったり、ヤイーシュから仕事を奪ったりってことはしたくないだけ。もしそうなら、二度とヤイーシュのことは口にしない。わたしは、どんな形でも人を傷つけるのは嫌だから……」


これは舞の本心だった。

自分自身が色々なことで傷つけられてきた。なるべく反論せず、黙って笑って誤魔化してきたのは、不用意に人を傷つけたくないからだ。

ただ、ミシュアル王子に出逢ってから、舞はハッキリ主張出来るようになった。しかも彼にだけは、ついカッとなり、思いのままに言葉をぶつけてしまう。


(これが……恋なんだろうなぁ)


と呑気に思う反面、やはり不安もある。


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