琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ヤイーシュはアル=バドル一族の長老が亡くなり、呼び戻されたのだ。彼には彼の立場や使命がある。それらは、王太子の私でも命令することは出来ない」
ようするに、ヤイーシュの故郷で重要人物が亡くなり、呼び戻されたらしい。しばらく帰って来ないのかも知れない。
お礼を言うのが遠のくな……と思ったが口にはしない舞だった。
ふと気付けば、舞は塀に突き当たっていた。
灰色の石造りの塀が庭を遮っている。舞の身長より低い程度の塀で、向こう側には池が見え、同じような庭が続いていた。そのまま塀に沿って歩いていると、同じく石造りのアーチ型の門を見つける。門衛が居ない所を見ると、向こう側も後宮の庭なのだろう。
舞が何気なく門を潜ろうとした時――。
「アーイシャサマ。イッテハダメデス」
少し離れて歩いていた付き添いの女官が舞を制した。日本語は習いたてなのか、カタコトだ。
「あ……この向こうって、ハディージャ妃のお庭なの?」
だとしたら大変だ。
しかし、舞の問いに女官は、「セイヒサマノ、ニワデス」とにっこり微笑んだ。
ようするに、ヤイーシュの故郷で重要人物が亡くなり、呼び戻されたらしい。しばらく帰って来ないのかも知れない。
お礼を言うのが遠のくな……と思ったが口にはしない舞だった。
ふと気付けば、舞は塀に突き当たっていた。
灰色の石造りの塀が庭を遮っている。舞の身長より低い程度の塀で、向こう側には池が見え、同じような庭が続いていた。そのまま塀に沿って歩いていると、同じく石造りのアーチ型の門を見つける。門衛が居ない所を見ると、向こう側も後宮の庭なのだろう。
舞が何気なく門を潜ろうとした時――。
「アーイシャサマ。イッテハダメデス」
少し離れて歩いていた付き添いの女官が舞を制した。日本語は習いたてなのか、カタコトだ。
「あ……この向こうって、ハディージャ妃のお庭なの?」
だとしたら大変だ。
しかし、舞の問いに女官は、「セイヒサマノ、ニワデス」とにっこり微笑んだ。