琥珀色の誘惑 ―王国編―
「舞、お前に余計なことを吹き込んだ人間がいるようだ。だが、それはお前が考えるべきことではない」

「どうして? ラシードが言ってたわ。ヌール様も日本の雑誌に『国王の妾』って書かれたって。わたしも日本でそう言われるのよ!」

「母上は王妃だ! 侮辱することは許さん!」


血相を変えて叫んだミシュアル王子に、舞は怒鳴り返した。


「わたしを侮辱してるのはアルじゃないっ! 綺麗な言葉でわたしを騙して、クアルンまで連れて来たのよっ」

「騙してなどおらぬ。嘘などひと言も」

「嘘は言ってない? だったらどうして、第一夫人にはなれない、って言ってくれなかったのっ!?」

「たったひとりしかおらぬ妻に、第一も第二もなかろう!? そんなに称号が気に入らぬなら取り払おう。“王妃”や“国王夫人”なら文句はあるまい!」

「じゃあ後宮で、正妃の宮に入ってもいいのよね? わたし以外の誰も後宮に妃はいないんだからっ!」


ミシュアル王子は返答に詰まる。


< 158 / 507 >

この作品をシェア

pagetop