琥珀色の誘惑 ―王国編―
ハディージャ妃から聞かされた。

王室の掟により、正妃の宮に入るのは正妃のみ。正妃の招待で訪れることは出来るが、無断で入れば、女官なら後宮を追われるほどの失態だという。


「正妃の宮に勝るとも劣らぬ宮殿を、お前のために作ろう。日本の……いや、世界中のマスコミに、一切の侮辱は認めないと通達する。舞、私はお前を愛している。アッラーの誓いは命を懸けても守る!」


ミシュアル王子の言葉に嘘はないだろう。でも、彼は王位を捨てるとはひと言も言わない。そして、国王の義務を遂行せよ、と命じられたら……。


「いきなり一ヶ月後に結婚って言われて……でも、クアルンまで来たわ。月瀬舞の名前が全然無くなるって言われても我慢した。自分の結婚式なのに、どこでどんな形でやるのかもわからないなんて……それでも、アルを愛してるから、砂漠までついて行くんだよ」


正妃は国王と同じ段に立てるが、第二夫人以下は一段下がる。そして、一度第二夫人になってしまったら、生涯、変わることはない。

舞は永遠にミシュアル王子の隣には立てなくなる。

それだけじゃない。


「ライラが諦めないはずだよね。長老会議ってハルビー家の味方なんでしょ? 次にライラを正妃として娶るように言われたら……アルに選択肢はないんだよね?」


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