琥珀色の誘惑 ―王国編―
窓際の古い机の上には写真立てがひとつ。

ライラが手に取ると、優しい三日月の光に照らされ……若い女性が赤ん坊を抱く姿が浮かび上がった。

そのガラスの上に一粒……二粒……透明な雫が落ちて。


『必ず……わたくしは正妃になって見せます。そしてきっと……』


その時、微かな車のエンジン音が聞こえた。車の普及が少ないこの地域では、深夜に排気音が聞こえることなどまずない。車は間違いなく、ライラのいる離宮に近づいている。


ライラは頬を伝う涙を拭うと、いつもと変わらぬ余裕の笑みを浮かべた。


< 166 / 507 >

この作品をシェア

pagetop