琥珀色の誘惑 ―王国編―
――舞を愛している。


早く結婚したいのは、これ以上我慢できないほど舞を欲しているからだ。

写真の少女は美しい女性に成長していた。その姿は彼が思い描いた通だった。舞の全てが欲しい。心も体も、生涯切れぬ絆で結ばれたいと願う。この想いを〝愛〟と呼ばずして何と言うか。

ただ、〝愛〟以外にも理由があるのは事実だ。

アッラーの誓いと王太子の義務。

結婚しなければならない時に、舞が二十歳を迎えた。しかも互いに愛し合った。


(私たちは幸運に恵まれている。アッラーの思し召しだというのに)


「これは運命だ。――何故それが、舞にはわからぬ」


ミシュアル王子の口から、悔しげな日本語の呟きが漏れる。



その直後、宮殿の廊下を乱暴に駆け抜ける足音が響いた。


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