琥珀色の誘惑 ―王国編―
ミシュアル王子が憎い訳ではない。

今でも好きだし、こうして少し離れるだけで、すぐに逢いたくなる。

でも、このままキスで誤魔化され続けてダメだと思う。


クブラーが言うには、


「ヌール様はお腹にお子様がおられても悩み続けられたそうです。しかし、待望の男子がお生まれになり、正直に申し上げて選択肢はなかったと聞いております」


ヌール妃が第四夫人を受け入れた理由は、やはりミシュアル王子の誕生だった。

受け入れなければ、息子は庶子として肩身の狭い思いをすることになる。王弟の長男、ひとり息子でありながら、だ。

それに、両国間の話し合いの結果、「王子はクアルン王国で育つのが望ましい」と言われたらしい。


息子と完全に引き離されるか。

クアルンで愛人として屋敷を与えられ、月に数回息子との面会を許して貰うか。


舞がもし、そういう立場に立たされたら、やはり子供の為に第二夫人を受け入れるだろう。

< 176 / 507 >

この作品をシェア

pagetop