琥珀色の誘惑 ―王国編―
「舞様――あなたは私の命の恩人です」
「は?」
「本来であれば、あなたに触れた指先は切り落されていました。欲望の対象として見た目も、猥褻な言葉を投げつけた口も潰されていたことでしょう」
(やっぱり! ……良かった、ホントのことを言わなくて)
ヤイーシュの言葉は妙にリアルで、舞は背筋がゾッとする。
助けに来てくれたミシュアル王子を、単純にカッコイイと思っていた。
ヤイーシュのことを二、三発ぶん殴って、叱り付けるくらいはOKと思ったけれど。
その時、ふいにヤイーシュは身を屈めた。
「舞様! このご恩は一生忘れません。私も砂漠の男です。我が部族アル=バドルとアッラーの名に懸けて」
「は、はぁ」
砂漠色の長い髪をポニーテールのように結び、サファイアの瞳を煌かせて舞の前で両膝をついて見上げている。
舞はそんなヤイーシュの剣幕に押され、素直に頷いた。
彼の正確な名前はヤイーシュ・アリ・ハッダード・アル=バドルという。
その名が持つ意味など、この時の舞は何も知らず……ターヒルと共に迎えに来たミシュアル王子の手を取って、舞はクアルン王国に第一歩を踏み入れた。
「は?」
「本来であれば、あなたに触れた指先は切り落されていました。欲望の対象として見た目も、猥褻な言葉を投げつけた口も潰されていたことでしょう」
(やっぱり! ……良かった、ホントのことを言わなくて)
ヤイーシュの言葉は妙にリアルで、舞は背筋がゾッとする。
助けに来てくれたミシュアル王子を、単純にカッコイイと思っていた。
ヤイーシュのことを二、三発ぶん殴って、叱り付けるくらいはOKと思ったけれど。
その時、ふいにヤイーシュは身を屈めた。
「舞様! このご恩は一生忘れません。私も砂漠の男です。我が部族アル=バドルとアッラーの名に懸けて」
「は、はぁ」
砂漠色の長い髪をポニーテールのように結び、サファイアの瞳を煌かせて舞の前で両膝をついて見上げている。
舞はそんなヤイーシュの剣幕に押され、素直に頷いた。
彼の正確な名前はヤイーシュ・アリ・ハッダード・アル=バドルという。
その名が持つ意味など、この時の舞は何も知らず……ターヒルと共に迎えに来たミシュアル王子の手を取って、舞はクアルン王国に第一歩を踏み入れた。