琥珀色の誘惑 ―王国編―
舞が消えた二日後の夜、王太子の宮殿に姿を見せたのがライラだ。

彼女はラシード王子を唆した一件で、ヌール妃より王宮の出入りを禁じられた。

ミシュアル王子からも、王太子の後宮に出入り自由とされていた権利を正式に剥奪され……。それは口頭で命じられる“出入り禁止”とは桁違いの厳しい処置だ。

さすがのライラも『お怒りが解けるまで謹慎致します』と宣言したほどだった。

 
『ダリャから出たと聞いていたが。何故此処にいる?』


ミシュアル王子の厳しい口調に、ライラは宮殿の広間でアバヤを着たまま平伏して答えた。


『あなたさまは砂漠に向かわれたと思い、父に挨拶をするべく戻りました。その折に……ハディージャ妃から、アーイシャ様のことで連絡があったと父から――』


ハディージャ妃は異母兄のマッダーフに、舞とのやり取りを全て報告したらしい。

それを聞いた時、ミシュアル王子はハディージャ妃の口を、縫い合わせてやりたい衝動に駆られた。


『ライラ――直前で私がアーイシャとの破談の可能性を報告したのが執着の理由か? 正妃候補であったそなたに、無駄な期待をさせたのかも知れぬ。だが既に事は決したそなたは自分に相応しい夫を見つけるよう。よいな』

『お待ちくださいっ! アル……どうか、わたくしの話だけでもお聞き下さい』


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