琥珀色の誘惑 ―王国編―
『……アル……。どうかわたくしをお助けになって。あなたの幸福のためなら、わたくしは喜んで犠牲になります』

『ライラ。シドは喜んでそなたを助けるだろう』


その時、ライラの頬が僅かに歪んだ。


『シド……ラシード殿下の求婚を、父に受けて欲しくはないのです。それは、アル……あなたさまの為にも』


その言葉に籠められた真意は、ミシュアル王子にも痛いほど伝わった。

だが、


『私は如何なる場合でも、アッラーの誓いは全力で守る。ライラ、長老会議は必ずや私の願い通りの答えを出すであろう。もう一度言う、私がそなたを娶る可能性は無くなった。諦めて夫を探すがよい』


言い終えると、ミシュアル王子は白いトーブの裾を払い、ライラに背を向けた。


『――仰せのままに』


ライラは唇を噛み締め、押し殺した声で答えたのである。


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