琥珀色の誘惑 ―王国編―
こうして見ると相当ガタが来ている。どう見ても、長年放置されている屋敷としか思えない。そんな場所に舞を? と思わないでもないが……。

匿うことが前提だから、此処しかなかったのかも知れない。

一応、門衛も立っており、料理も作って貰え、室内は掃除もしてある。宮殿での生活が豪華過ぎて、多少麻痺しているが……一般人の舞にしたら至れり尽くせりなはずだ。


ただ、日本語はクブラーしか話せないので、寂しくはあった。

しかも、舞が日本人だとバレたら困るので、使用人に何を聞かれても一切喋ってはいけないと言われている。

加えて、砂漠の近くは危険が多いので間違っても外に出てはいけない、とも。でもオンボロの屋敷に比べて、塀は高く頑丈だ。これでは外に出るどころか、コッソリ外を覗くことも不可能だろう。


(外に行かなきゃいいんだよね。それと、誰とも話さなかったらOK、と)


舞は……悩んでばかりでも埒は明かない、気持ちを切り替えようと、別邸の中を探検することにしたのだった。


その三十分後……やっと見つけた鍵の掛かっていない部屋で、舞はとんでもない物を手に、呆然と立ち尽くすことになる。


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