琥珀色の誘惑 ―王国編―
一方、ダリャ市内のライラである。

彼女がクブラーに出した命令は……。


――今日の午後、クアルンのマスコミをそちらに向かわせるので、何か理由をつけて舞を表に連れ出すように、だった。


舞に酒を飲ませ、男とふたりきりで居るところを写真に撮らせる。飲酒は違法行為で、おまけに男とふたりきりとなればどんな間違いが起こるかわからない。

或いは、舞は外国人娼婦として警察に逮捕される可能性もある。

舞を傷つけることはない、と聞いていたクブラーは途端に躊躇した。

ライラも当初はそのつもりであったのだが……。



ライラは急場凌ぎに自分を花嫁とするようミシュアル王子に迫った。

ラシード王子との結婚をライラの父、マッダーフが許せば、それは兄弟の対立を意味する。

そういった政治的配慮もライラは取引材料にしたのだが……。

残る手立ては、世論が『アーイシャは王妃に相応しくない』と言い始めるしかない。国民が最大の味方であるミシュアル王子にとって、これは逆らい難い意見となるはずだ。


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