琥珀色の誘惑 ―王国編―

(5)はがれた仮面

『ライラ――そなたが何故、再び私の前に連れて来られたか、理由はわかるな?』


場所は王太子の宮殿。

大広間の正面に立つミシュアル王子は、燃え立つような黄金の瞳でライラを睨みつけていた。


『いえ。一向に』

『……よかろう』



ラシードの件では、さすがのミシュアル王子も相当な怒りをライラに覚えていた。だが、マッダーフの娘にそうそう厳しい態度も取れず……。

だが前夜、ライラが口にした言葉が問題であった。


――『ハディージャ妃から、アーイシャ様のことで連絡があったと父から』


ライラが挨拶に戻った事はどうでも良い。

ハディージャ妃が電話か手紙でマッダーフに連絡を取ったのなら、それも罪には問えまい。

だが、マッダーフは現在軍務大臣として特別地区に出向している。首都に戻るのは明日。現在は、通常の電話で連絡の取れる場所にはいない。


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