琥珀色の誘惑 ―王国編―
すると、後方で馬のいななきが聞こえ、蹄の音がドンドン近くなる。


(こっ、今度は馬で追われてるの? わたしが何をしたって言うのよっ)


砂浜でランニングをすると足腰に負担が少なく鍛えられてちょうど良い。そんな話を聞いたことがある。

ただ、クアルンにはプリンスの花嫁になる為にやって来たのだ。決して、砂漠でトレーニングをする為ではない!

おまけに、朝から食事も水分も摂っていなかった。お腹は空いて、喉はカラカラだ。


(もう……ダメ……)


太腿が持ち上がらなくなり、脚が縺れ……舞は砂の上に倒れ掛けた。


――その時である。


突然、馬上の男にウエストを掴まれ、なんと馬に引き上げられたのだ。

そして、


「こんなところで何をされてるんですっ!?」


耳に響いたのは日本語であった。

聞いたことのある声だ、と思いながら……舞の意識は……落ちる寸前、現実に引き戻されたのである!


「ヤッ、ヤイーシュ? なんで?」


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