琥珀色の誘惑 ―王国編―
「娘たちには全て相手が決められていて、他の者は手が出せません。独身の男が多く、掟の外にある一族以外の女は力で奪おうとします。――申し訳ありませんが舞様。あなたは私を追って来た日本人の恋人である、と彼らに説明しました。そのおつもりで」

「そ、それって……ヤイーシュから腕尽くで奪うとか、言い出さない?」


ヤイーシュに凄く迷惑を掛けるんじゃないか。一族の中で彼の立場が不味くなるかも。そんなことを心配し、舞は恐る恐る尋ねた。

しかし、ヤイーシュは舞に、彼女の想像を上回る答えをくれたのである。



「私から? 一族の長たる私から、女を奪おうなどという男はいません」

「一族の長って……」


“シーク・ヤイーシュ・アリ・ハッダード・アル=バドル”


「この砂漠では、シーク・ミシュアルと私は対等ですよ」


サファイアの瞳は危険に光り、舞の胸に消えかけた不安が浮かんだ。


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