琥珀色の誘惑 ―王国編―
「だからっ! 馬の上で話したでしょ? ライラとクブラーに騙されたんだって。命に関わるとか言われて……慌てて逃げ出したんだから」

「お言葉ですが、砂漠に逃げ込むなど愚かにも程がある。私が昨日、族長就任をカンマン市の礼拝堂に報告に行かなければ、あなたと会うこともなかった。まさに……イン・シャーアッラー、ですね」


舞は悔しいが反論出来ない。

その直後、テントの影からこちらを見つめる瞳に気付いた。

それも、ひとりやふたりでなく、たくさんの若い女性。舞がヤイーシュに連れられ奥まで進むと、その女性……いや、舞より若いので少女たちと言うべきだろう。彼女らが年配の女性に寄り添い泣いている。

舞がその様子を不思議そうに見つめていると、年配の女性は複雑そうな笑顔を浮かべた。


ヤイーシュの言った通り、一族の女性たちは顔を見せていた。既婚女性だけはヒジャブで頭を覆うらしい。

そのヒジャブも色とりどりの綺麗な柄だ。衣服もそうである。麻や木綿の丈夫で色鮮やかなものを身に着けていた。


ヤイーシュが舞から離れ、その女性たちの前に立ち一言二言話している。

すると、なぜか少女らは一層泣き崩れ……。


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