琥珀色の誘惑 ―王国編―
「じゃ、ヤイーシュにも決められた女性がいるんだ」
舞の質問にヤイーシュは首を横に振った。
「私の父は遊牧の暮らしを嫌い、部族を離れたのです。そして、ダリャ市内で働いていました。その時に知り合ったのが、アメリカ人の母です――」
ふたりが恋の炎を燃やしている時は良かった。
だがヤイーシュが五歳の時、その火は消えてしまう。彼の母親は息子を置いてアメリカに帰ってしまったのだ。それから二年も経たず父も亡くなり……。ひとりになったヤイーシュを、族長であった祖父が引き取ってくれた。
しかし、ヤイーシュの父・ハッダードの結婚は部族が認めた形で行われていなかった。
その為、ヤイーシュの立場も微妙なものになる。彼は結婚相手を決められないまま成人したのだった。
「偉大なる祖父が亡くなり、私は部族を出ました。そして、この砂漠で出会い、我が主君と定めたシーク・ミシュアルに仕えたのです。しかし、祖父の後を継いだ叔父が私を後継者に指名し……。族長(シーク)の地位を継いだ私に、周囲は妻を娶るよう言い始めました」
舞の質問にヤイーシュは首を横に振った。
「私の父は遊牧の暮らしを嫌い、部族を離れたのです。そして、ダリャ市内で働いていました。その時に知り合ったのが、アメリカ人の母です――」
ふたりが恋の炎を燃やしている時は良かった。
だがヤイーシュが五歳の時、その火は消えてしまう。彼の母親は息子を置いてアメリカに帰ってしまったのだ。それから二年も経たず父も亡くなり……。ひとりになったヤイーシュを、族長であった祖父が引き取ってくれた。
しかし、ヤイーシュの父・ハッダードの結婚は部族が認めた形で行われていなかった。
その為、ヤイーシュの立場も微妙なものになる。彼は結婚相手を決められないまま成人したのだった。
「偉大なる祖父が亡くなり、私は部族を出ました。そして、この砂漠で出会い、我が主君と定めたシーク・ミシュアルに仕えたのです。しかし、祖父の後を継いだ叔父が私を後継者に指名し……。族長(シーク)の地位を継いだ私に、周囲は妻を娶るよう言い始めました」