琥珀色の誘惑 ―王国編―
少女らの相手は決まっている。

だが、若き族長が望めば、拒絶する者はひとりもいないだろう。また、異国の風貌をしたヤイーシュは非常に人気があり、少女らは密かに自分が選ばれることを期待していた。

しかし、許婚を奪われた男は、おそらく黙って一族を去ることになる。

ヤイーシュはそれが嫌で、花嫁は外から連れて来ると宣言した。


そんな事情を話しながら、ヤイーシュは舞をひとつのテントに案内する。

舞が恐る恐る足を踏み入れると、中は一本の柱で支えられた小さめのテントであった。外から見えぬように、グルリと天幕が張り巡らせてある。

砂の上に敷かれた絨毯は、他のテントで見かけた物とは比較できないほど美しい。見識のない舞にでも、その差がわかる程だ。

テントの隅には、土台のしっかりとした寝台が置かれていた。サイズはセミダブル程度で大きなものではない。

でも、さすがに族長ともなれば、雑魚寝はしないらしい。


ヤイーシュは青いターバンをスルスルと外していく。

すると、砂漠色の長髪が零れ落ちた。最初に会った時に比べ、幾分短くなっている。


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