琥珀色の誘惑 ―王国編―
砂塵を巻き上げ、ヘリはアブル砂漠に着陸した。

カンマン市から程近いその場所に、一台の日本車が放置されている――ミシュアル王子がその報告を受けた時、既に陽は傾いていた。


クブラーから舞の幽閉場所がカンマン市の離宮であることを聞き、アルは空軍のジェットヘリで駆けつけた。

更には舞が、恐ろしい程の軽装で飛び出したことを知り……市内全域に戒厳令を出したのである。


『カンマン市内に紛れ込んだ外国人女性は、国家の最重要人物である。万にひとつも傷を負わせた場合、国家間の紛争に繋がりかねない。その場合、個人のみならず、多数の国民に犠牲者が出るだろう』


そんな通達が市民全員になされた。

市内は警察官に任せ、軍が砂漠を捜索。数時間後、ガス欠の日本車が発見されたのだった。



『殿下、間もなく日が落ちます。探索は夜明けと共に』

『馬鹿者! 外国人の娘がたったひとりで、この砂漠で何時間過ごせると思うのだっ!? 一刻の猶予もならん。半径三十キロの範囲内を徹底的に探せ! 近くにいるベドウィン族の手も借りるのだ。急げっ!』


ミシュアル王子はターヒルに命じると、彼自身も一頭のアラブ馬に飛び乗った。


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