琥珀色の誘惑 ―王国編―
最初、プロポーズは冗談だと思っていた。

ヤイーシュにとってミシュアル王子は主君。未来の国王に刃向かうわけがない。


「舞様はシーク・ミシュアルの第二夫人では納得出来ぬのでしょう? 彼は王族ですから、王族のルールは決して曲げません」


ヤイーシュは涼しい顔をして断言した。


もし、ミシュアル王子が舞の為にルールを変えてしまったら……。

彼は女の言いなりになったと、国民から軽んじられる。何より名誉を重んじるミシュアル王子が、その名誉に泥を塗ってまで、規則を変えることは有り得ない、と。

そして……。


「現国王の認めた婚約者を破談にする時、彼自身の名誉のために、あなたに新しい夫を探すのが慣例なのですよ」


ミシュアル王子から婚約を解消した、という形を取る場合――自分に匹敵する新しい婚約者を探してきて推薦するらしい。


(そんなもん、自分で探すわよ!)


舞ならそう思うが、クアルンをはじめ近隣の国では当然のことだという。


その相手にヤイーシュなら問題はない。


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