琥珀色の誘惑 ―王国編―

(9)嵐の前触れ

寝台の上に座り、舞は肺がカラになりそうなほど大きな溜息を吐いた。


誘惑するつもりなんてないし、冒涜なんてもっての外である。

砂漠で行き倒れ寸前の彼女を、ヤイーシュは助けてくれた。先日のデパートの時もそうだ。


(これじゃ、お礼になんないよ……)


舞は寝台の縁に額をゴンッとぶつける。

カンマン市内で派手な騒ぎを起こしてしまった。それに、騙されたとはいえ、勝手に王太子の後宮を抜け出したのは事実だ。アバヤもなしで町をうろつき、警察官の前で思いっきり車の運転までしてしまった。


(車の運転がNGなんて、もっと真面目にシャムスの言葉を聞いとくべきだった……わたしってバカ)


ひょっとしたら、自分はもうミシュアル王子の婚約者じゃないかも知れない。


(とっくの昔にわたしなんか忘れて、アルはライラとの結婚を進めてたりして……)


アハハハ……と声に出して笑い、舞は余計に落ち込んだ。


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