琥珀色の誘惑 ―王国編―
「舞様は日本からクアルン王室に入ることを選ばれた。それは“自由”と引き替えですか?」

「違うわ。わたしはアルが好きだから……だから」

「私は自らの意志で此処にいます。おそらく、あなたも……国家国民の為に、そう言われてもこの国には来られなかったでしょう。ライラ様もそのはずです。――私の知る人間で“自由”に生きることが許されないのは、シーク・ミシュアル、彼だけです。彼がそれを求めた時、この国に戦乱を招くでしょう」


舞が更にズンと落ち込んだ時、ヤイーシュは彼女が写真立てを持ち出した経緯を尋ねた。

特に隠す必要もないので舞は正直に答える。


「……ライラってお母さんそっくりなのね」


そんな舞の言葉を聞き、ヤイーシュは疑問を口にした。


「さあ、どうでしょうか? サマン王女のお顔を拝見したことはありませんが、少なくとも小柄で細身の女性であることは確かです。ライラ様は父方の血を濃く受け継いでおられ、叔母のハディージャ様に似ておられると噂で聞いたことはありますが……」


一瞬、それが何を意味するのか舞にはわからなかった。

だが、ライラは王女の娘だから王族に名を連ねている。もしそれが違ったら……。


(写真に写ってるのは……誰?)


ヤイーシュが退出した後も、しばらく悩み続けた舞であった。


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