琥珀色の誘惑 ―王国編―
「……おはようございます……」
蚊の鳴くような声で舞は答えた。
だが、彼は気にしていない、というか……。どうも、別のことに気を取られているらしい。
「今一度お尋ねしたいのですが……」
「な、なに?」
「シーク・ミシュアルは、あなたが望むものをほとんど与えないでしょう。愛を失えば、あなたは全てを失くす事になる。私は……彼と対等になるべくシークとなりました。だが、これは捨てることも出来るのです」
「捨てるって、どうする気?」
「あなたが日本に戻りたいなら、私はシークを返上します。どうせこの容姿、何処で暮らしても同じこと。私と共に、日本で暮らしませんか?」
その言葉は激しく舞の胸を揺さぶった。
だが……。
「ずるいよ、ヤイーシュ。日本には帰りたいに決まってるじゃない。でも、結婚が壊れたら……ひとりで帰る。ヤイーシュってホントにわたしが好きなの?」
「全てを捨てると言っても、信じては貰えないのですか?」
「だって……愛してるって言ってくれないじゃない!」
「……」
青い瞳が僅かに翳り、その時、表からアラビア語で声が掛かった。
蚊の鳴くような声で舞は答えた。
だが、彼は気にしていない、というか……。どうも、別のことに気を取られているらしい。
「今一度お尋ねしたいのですが……」
「な、なに?」
「シーク・ミシュアルは、あなたが望むものをほとんど与えないでしょう。愛を失えば、あなたは全てを失くす事になる。私は……彼と対等になるべくシークとなりました。だが、これは捨てることも出来るのです」
「捨てるって、どうする気?」
「あなたが日本に戻りたいなら、私はシークを返上します。どうせこの容姿、何処で暮らしても同じこと。私と共に、日本で暮らしませんか?」
その言葉は激しく舞の胸を揺さぶった。
だが……。
「ずるいよ、ヤイーシュ。日本には帰りたいに決まってるじゃない。でも、結婚が壊れたら……ひとりで帰る。ヤイーシュってホントにわたしが好きなの?」
「全てを捨てると言っても、信じては貰えないのですか?」
「だって……愛してるって言ってくれないじゃない!」
「……」
青い瞳が僅かに翳り、その時、表からアラビア語で声が掛かった。