琥珀色の誘惑 ―王国編―
ヤイーシュの余裕の源を知り、ミシュアル王子は愕然とした。

その言葉が事実なら、法律の上からも、舞はヤイーシュの妻となる。どれほどの地位と権力をもってしても、ヤイーシュが舞を手放さぬ以上、正しい方法で彼女を得ることは叶わない。


ミシュアル王子はこれまで経験したことのない敗北感に手足が震えた。


「シーク・ミシュアル、あなたの妻はここにはおりません。あなたが私の妻を連れ去ると言うなら……私は剣に懸けて阻止します!」


正義はヤイーシュの手に移った。

剣を抜けば、ミシュアル王子自身が掠奪者となってしまう。

王太子の名誉に懸けて、そんな真似はできない。


だが次の瞬間――ミシュアル王子は腰に下げたジャンビーアを鞘から抜き放った!



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