琥珀色の誘惑 ―王国編―
「わたしを殴るって言うの?」


舞がヤイーシュを睨みつけると、


「とんでもない。あなたに傷は負わせません。ただ……あなたの世話をする女が痛い思いをするだけです」


しらっとした顔で言うと、ヤイーシュは颯爽とテントを後にした。




舞の耳にも、ふたりが交わす日本語は筒抜けだ。

ヤイーシュのテントは広場のすぐ近くらしい。当然、舞が大声で叫べばミシュアル王子にも聞こえる距離。

それをわかっていて、ヤイーシュは釘をさしていったのだ。


(ヤイーシュってば、初めて会った時と同じじゃない! 絶対悪党よっ!)


舞は、青いトーブを着てジャンビーアを腰に下げた男ふたりに怒りの眼差しを向ける。

彼らは、詳細はわからないものの、居心地が悪そうに、舞から視線を逸らすのだった。


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