琥珀色の誘惑 ―王国編―
直後、ミシュアル王子はヤイーシュの手からジャンビーアを奪い取った。そのまま、自らの血に濡れた剣をヤイーシュの喉元に突きつける。 


「ヤイーシュ、今一度問う。――お前は私を裏切ってはいない。舞はお前のものではないと言え!」


右肘と肩の関節を極められ、ミシュアル王子に背後を取られた。ヤイーシュに出来ることは砂上に跪くことだけだ。


「……無礼を承知で申し上げます。現状のままでは、舞様を“ただひとりの妻”とされることは不可能かと。ですが舞様は……如何なる甘言を用いましても、私の求婚を断わられました。前言を撤回し、殿下にとって“最愛の妻(アーイシャ)”の名前に相応しい方であると……せめてお言葉なり、下されてはいかがですか?」


ヤイーシュは青い瞳を閉じたまま、日本語で答える。


――同じ言葉を、わたしはアルから聞きたい。


そう言った舞の為に、ヤイーシュはこんな真似をしてくれたのだ。そう思うと舞の胸は熱くなる。


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