琥珀色の誘惑 ―王国編―
(ヤイーシュって、やっぱりいい人なのかも……)


だが、ミシュアル王子の瞳を見た時、舞はゴクリと唾を飲み込んだ。

そこには怒りの炎が燃え立っている。金色が揺らめき、目から光線でも発射しそうだった。


ミシュアル王子はジャンビーアを砂に叩きつけ、ヤイーシュを解放する。


「私が誰か? 答えよ、ヤイーシュ」

「はっ。クアルン王国王太子、シーク・ミシュアル・ビン・カイサル・アール・ハーリファ殿下にあらせられます」


尊大なミシュアル王子の問い掛けに、ヤイーシュは向きを変え、膝をついたまま答えた。

それに合わせ、アル=バドル一族の者たちもその場に跪く。日本語はわからないものの、族長であるヤイーシュの態度に倣ったようだ。


「生涯妻はただひとり――この私がアッラーに誓ったのだ。誓いは必ず守ると、何度言わせれば気が済む!?」


朝日を背に、左肩の傷を気にする素振りすら見せず、ミシュアル王子は言い放つ。


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