琥珀色の誘惑 ―王国編―
所々見えたヤイーシュの本気に舞も不安になる。


「私とて同じだ。ターヒルと示し合わせた茶番に気付かねば、ヤイーシュを殺してお前を取り戻すつもりであった。いいか、舞。世界中どこに逃げても、私は必ずお前を探し出す。誰の物であっても、奪い返すぞ……忘れるな」


そう言ってミシュアル王子は深い息を吐いた後、ゆっくりと目を閉じた。


「アル? アル、どうしたの? ねぇ、アルってば!」



あの後、側近たちが忙しなく動き始め、ヘリの中はアラビア語が激しく飛び交った。

舞はミシュアル王子の隣の席から引き離され……そして、離宮に到着した後も、彼の部屋に入れて貰えなかった。そのまま半泣きで廊下を右往左往していたのだ。

ターヒルがヘリに同乗していなかった為、日本語を話せる人間がいなかったのである。


夕方近くにようやくターヒルが戻り、舞に説明してくれた。


< 260 / 507 >

この作品をシェア

pagetop