琥珀色の誘惑 ―王国編―
この離宮で一番立派な部屋らしい。

大きな寝台が中央に置かれ、しかも天蓋付きだ。ミシュアル王子はそのベッドの上に、たくさんのクッションを背もたれにして体を起こしていた。


「起きてたんだ。まだ、眠ってるんだって思ってた」

「心配掛けたな」

「そうよ! 急に黙り込むんだもの……ホントにびっくりしたんだから」


ミシュアル王子は隅に控えていた女官と警備兵を下がらせた。

ふたりきりになった途端、彼はもっと近くに寄れと手招きをする。舞はいそいそと近づき、手が届く場所まで来た瞬間――手首を掴まれベッドの上に引っ張られた。


「髪がまだ濡れているな、良い香りだ」


ミシュアル王子の言葉に舞はドキッとする。


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