琥珀色の誘惑 ―王国編―
「では……どういう意味だ?」

「だから、こんなことして、傷口が開いたらどうするの?」

「……舞、私の上でそんなふうに動くものではない」


ミシュアル王子の息が更に荒くなった。

浅黒い肌が薄っすらと赤くなり、鼓動も早まる。舞はやっぱり怪我が酷いんじゃ、と思い、ミシュアル王子から離れようとした。

その時、シャツの裾が何かに引っ掛かったのだ。舞はそれを手で外そうとして硬いモノに触れる。

ボタンかホック或いはベルトを想像していた彼女にとって、それは予想外にも長くて大きい……舞はハッとして、ミシュアル王子に尋ねた。


「アルって、ベッドの中までジャンビーアを持って入ってるの?」


首都以外の町、とくに砂漠の近くはそんなに危険なんだろうか。そう思うと、舞は自分の無鉄砲さにゾッとした。

それほどまでの、彼女の手の中にあるソレは、鋼(はがね)のような感触をしている。


そんな舞をミシュアル王子は真剣な瞳で見つめ――。

次の瞬間、彼の表情は蕩けるような甘い微笑みに変わった。


「それは……用途の違うジャンビーアだ。そして、鞘を求めている」


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