琥珀色の誘惑 ―王国編―
「なっ、なんでよっ!? ちょっと待って……落ち着いたほうがいいと思う。わたしを殺したって、正妃にはなれないわよ。殺人犯はクアルンでも刑務所行きだってば!」

「この場であなたを殺して……写真を処分した後、わたくしも死にます。どうせ、もうおしまいなのだから」


ライラの瞳は焦点が合っておらず、表情は能面のようだ。今の彼女を見ていると“この世の終わり”とか“絶望”とかの言葉がピッタリに思える。


「い、いや……そんなことないって。ほら、人間やる気になれば出来ないことはない! って言うじゃない」


正妃の座を狙ってるライラを応援してどうする、と思いつつ……。

場違いにも、こんなものを手に怯まず戦える、ミシュアル王子たちは凄いのかも知れない、と感心していた。

舞自身、ヤイーシュにジャンビーアを抜かれたことはあった。だが、今思えばあれは、単なる脅しだったとわかる。

でも、目の前のライラは本気だ。

いくら強気な舞でも、思わす腰が引けてしまう。


「ええ……そうね。そう思って全力で挑んだけれど、何をどうしてもアルはわたくしを正妃には選んで下さらなかった。最後の手段も……失敗に終わったわ」

「人生に諦めなければ負けはない! って何処かの偉い人が言ってたわ。人生って何が起こるかわからないし……一寸先は闇って言うか……いやいや、そうじゃなくって。ア、アルの正妃の座って、わたしと結婚しても空いてる訳じゃない。まだまだ、諦めるのは早過ぎるって」


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