琥珀色の誘惑 ―王国編―
どんどん墓穴を掘ってる気がするが、舞にはどうしようもない。

一歩、また一歩、鋭い刃を舞に向けたまま、ライラは近づいてくる。


「アーイシャ殿、今更だけれど……わたくし、あなたのことは嫌いではなかったわ。ここで期日が過ぎるまでおとなしくしているか、醜聞で日本に帰されるか。どちらでも良かったのに……。どうしてこの国に来たの? 日本のような素晴らしく自由で、女性の権利が認められている国にいながら……どうして?」

「ど、どうしてって。アルに連れて来られたんだけど」

「あなたは日本に戻った方が幸せだったのよ。こんな……女として産まれた瞬間に首輪を嵌められ、父親のもとに繋がれるような国で暮らすより。そう……わたくしはやっと、自由になれるんだわ」


それは歌うような軽やかな声であった。


ライラの敗北宣言はありがたいが、死なばもろとも、では洒落にならない。

舞の背後はベランダだ。

窓は鍵が掛かっているだろうが、建物自体にかなりガタがきている。しかも木枠なので、体当たりすれば簡単に壊れるだろう。

だがそれには、ライラの気を逸らさなくては……。


その時、ライラが舞目掛けて一気に突っ込んで来た。


舞は手にした写真立てをライラに向かって投げつけ、次に――なんと脇にあった円形テーブルを持ち上げた!


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