琥珀色の誘惑 ―王国編―
「自由とは――好きに生き、好きに死ぬことではない。自らの言動に全ての責任を負うことで、人には選択の義務と権利が与えられるのだ。ライラ、首輪を外してもお前は自由にはなれぬ」


夜明け前、薄闇の室内にミシュアル王子の凛とした声が響いた。

ドアが大きく開け放たれ、そこに彼が立っている。


「ア、アルッ!」


舞とライラの動きが止まった。

一瞬の隙をつき、ターヒルが室内に飛び込んでくる。そのままライラの腕を掴み、あっという間に刃物を取り上げた。 


「ライラ、国外追放で済む所を……愚かな真似をしたものだな。ターヒル、連れて行け」

「お待ち下さい」


ライラはそう答えると、その場に屈み込んだ。

彼女の足元には例の写真が……写真立ては離れた場所に落ちて壊れていた。舞がしっかり枠を留めていなかったようだ。

ライラは大事そうに写真を手に取り、胸に抱えた。そのまま、一礼してターヒルに連れて行かれそうになる。


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