琥珀色の誘惑 ―王国編―
「ライラ様のホームステイ先の隣に、アメリカ人留学生の男もホームステイしていました。隣り合った二つの家族は非常に仲が良く……。当然の成り行きで、ライラ様もその男と会う機会が増えたようです。その男は一昨年の秋、現地の友人に自慢げに語ったそうです。――イスラム女性のバージンを頂いた、と」


しかも、妊娠したのですぐに結婚して欲しい、と言われたが……。

アメリカにいる家族の写真を見せ、実は妻子がいると告白したらすぐに去って行った、と笑って話したそうだ。

だがその直後、アメリカ人男性は留学書類に不備があったとかですぐに国に帰された。
 該当男性は大学の留学生名簿から抹消されており、渡豪歴すら普通には見つからないようになっていた。およそマッダーフの指示であろうとターヒルは言う。

そして、


「ライラ様、クアルンの国籍と王族の身分を詐称されましたね? それから、お気づきでしょうか? ミスター・ジョー・ブライトンは独身です」


ターヒルの言葉にライラは目を見開いた後、力なく首を振った。


何と、ターヒルは“王太子命令”を出し、在米クアルン大使館にそのミスター・ブライトンとやらを召喚したのだ。

ブライトンはマッダーフに口止めをされていたらしいが、さすがに治外法権の大使館に連れ込まれては逆らえない。質問にはペラペラ答えたという。


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