琥珀色の誘惑 ―王国編―
ライラは随分長い間、ミシュアル王子に憧れを抱いていた。
しかし、当のミシュアル王子は日本人婚約者以外には全く興味を示さない。ライラは、自分はミシュアル王子にとって、幼なじみの少女から抜け出すことは出来ない、と悟った。
ところが、父は相変わらずライラを駒のようにしか考えない。頑なに正妃の座を奪うように指示する。
一方、母サマン王女は……娘に無関心であった。
サマン王女にとってライラは『ようやく授かった宝』ではなく、『無理矢理産まされた子供』しかも『役立たずの娘』に過ぎなかったのだ。
ライラが男子であったなら、マッダーフは日本の血を引くミシュアル王子らを亡き者にしたかも知れない。そして我が子を王位に就けるよう工作したはずだ。
ライラにとって、ラシード王子だけが変わらず彼女に愛を捧げた。だが、彼女は自由に憧れていた。恋愛においても、自ら相手を選びたいと願った。
そんな時、国策により女性の社会進出が認められるようになったのだ。
ライラにとって、それはチャンスだった。彼女は古い慣習からも、父の束縛からも逃げ出したかった。舞ではないが“いつか王子様が”と夢見て……。
もちろん本物の王子など要らない。ただひとりの男性と情熱的に愛し合いたいと願う、彼女も普通の女性だった。
そして出逢ったのが、アメリカの農務省に席を置くジョー・ブライトン。入省一年目で二十四歳。相互理解と専門分野の見識を深めるという名目で、彼は公費で留学していた。
しかし、当のミシュアル王子は日本人婚約者以外には全く興味を示さない。ライラは、自分はミシュアル王子にとって、幼なじみの少女から抜け出すことは出来ない、と悟った。
ところが、父は相変わらずライラを駒のようにしか考えない。頑なに正妃の座を奪うように指示する。
一方、母サマン王女は……娘に無関心であった。
サマン王女にとってライラは『ようやく授かった宝』ではなく、『無理矢理産まされた子供』しかも『役立たずの娘』に過ぎなかったのだ。
ライラが男子であったなら、マッダーフは日本の血を引くミシュアル王子らを亡き者にしたかも知れない。そして我が子を王位に就けるよう工作したはずだ。
ライラにとって、ラシード王子だけが変わらず彼女に愛を捧げた。だが、彼女は自由に憧れていた。恋愛においても、自ら相手を選びたいと願った。
そんな時、国策により女性の社会進出が認められるようになったのだ。
ライラにとって、それはチャンスだった。彼女は古い慣習からも、父の束縛からも逃げ出したかった。舞ではないが“いつか王子様が”と夢見て……。
もちろん本物の王子など要らない。ただひとりの男性と情熱的に愛し合いたいと願う、彼女も普通の女性だった。
そして出逢ったのが、アメリカの農務省に席を置くジョー・ブライトン。入省一年目で二十四歳。相互理解と専門分野の見識を深めるという名目で、彼は公費で留学していた。