琥珀色の誘惑 ―王国編―
「え? 何? ちょっと、わたしじゃなくてライラを追いかけてよっ!」

『馬鹿者! この女に触れるでないっ!』


ミシュアル王子の怒声に全員その場に平伏した。


『そうではない。先に飛び出した女を追え! 捕まえて私の前に連れて参れ!』


立て続けに王太子に叱られ、最初に舞に触れた衛兵は半泣きで走り出した。

舞もライラを追って行きたいが、今度ばかりはミシュアル王子にガシッと両腕を掴まれ、簡単には振り解けそうにない。


「安心いたせ。すぐに兵が取り押さえて連れて……」


ミシュアル王子が不意に声を失った。

その視線の先に何があるのか……舞も懸命に目を凝らす。


大通りの真ん中にアバヤを着たひとりの女性が立っていた。ライラに間違いない。車は絶えず行き来し、兵らは車を止めてから道路に出ようとする。

だが、それより先にライラが動いた。


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